1. ホーム
  2. 実例
  3. 著者話
  4. 11「答えは自分の中にある 終末期医療と在宅看取り介護の記録」マキプ→さん
マキプ→さん

11「答えは自分の中にある 終末期医療と在宅看取り介護の記録」マキプ→さん

「答えは自分の中にある 終末期医療と在宅看取り介護の記録」

ジャンル:エッセイ・詩・ノンフィクション  発行:2017年5月

「答えは自分の中にある 終末期医療と在宅看取り介護の記録」

「拘束は嫌だ、家に帰りたい」本人の望みを叶えることが、こんなに難しいなんて――。祖父の願いをかなえるために、マキプ→がとった行動とは? 家族を介護する戸惑いと揺れる気持ちをストレートに書き綴ったエッセイ。

出版×クラウドファンディングで、
人とのつながりという大きな財産を得ました。

Parade Books クラウドファンディングを利用して出版されましたね。
著者 自費出版イコールお金がかかるという印象で、検討する前にあきらめていました。そこで知ったのがクラウドファンディング。単純だから「あ、これで挑戦できるんじゃないか」って思っちゃったんです。やると決めてから苦労するわけですけども(笑)。
Parade Books そうだったんですね。クラウドファンディングを知ったのはインターネットですか?
著者 いえ、本に載っていました。知らない言葉だったので調べてみたら「こういう仕組みがあるんだ。面白そう」と。失敗してもマイナスにはならないと考えて、利用することにしました。
ただ、スタートしてからはクラウドファンディングの意味合いが大きく変わりました。最初は「お金を調達する仕組み」としか考えていなかったんです。でも、自分で活動を告知する必要に迫られたおかげで、興味を示してくれる人や応援してくれる仲間ができました。実は私、それまでSNSすらやったことがなくて。
Parade Books 意外です。今はすごく活用してらっしゃるんで。
著者 (笑)。クラウドファンディングを告知するために、「なんとか使ってやってみなくちゃ」と始めました。手さぐりながらもFacebookで情報を発信すると、まったく知らない人が「いいね」してくれて。そこから本当に広がりました。
これまで疎遠になっていた昔の知人にもたくさん連絡したんです。メールでの連絡がほとんどでしたが、一斉メールというわけにはいかないので、一人ひとり文面を考えるのに時間がかかりました。
Parade Books そもそもどうして出版しようと思ったんですか?
著者 もともと書くのが好きで、作家になれたらいいなという思いがずっとあったんです。けど、懸賞応募しか作家になる方法を知らなかったんですよね。自費出版自体の存在は知ってたんですけど、ただ単に「高い」というイメージで調べることもなく……。そんなとき、「昔の有名作家は自費出版でデビューしている人が多い」というのをテレビか何かで知って。「あれ、私、最初は自費出版でいいのかも?」と。
Parade Books 自費出版の会社の中から、パレードブックスをお選びいただいた決め手はありましたか?
著者 まずは直接会って話せる地域の会社をネットで探しました。電話やメールだけではなく、会って話して、進めたかったんです。私にとって大きなプロジェクトで、不安があったので。ホームページをいろいろ見ていると、安さを売りにしている出版社が目につきました。でもクオリティと値段っておよそ比例するものだと思っていたので、安さをウリにしている会社には疑問を感じて。ホームページのデザインがあまりに簡素だと本もそうなるだろうという思いもありましたね。
そんななかでパレードブックスさんはデザインをウリにされているところに惹かれました。祖父の介護という重いテーマですけど、硬いイメージの本にしたくなかったんです。「持っているだけでうれしくなるような本にしたい」という思いをデザインでなんとかしてもらいたくて。
あとは直接訪問してみて、そのときの担当者の印象ですよね。もうお任せしよう、この人なら相談してやっていけそうって思えたので。けっこう最初のときから細かいお話をしましたよね?
Parade Books 事前に原稿をお送りいただいていたので、内容を把握したうえで詳しくお話ができました。結果としてご満足いただけましたか?
著者 表紙カバーのデザインはオレンジ色が良いという希望しか出さなかったんですが、もう大満足でした。タイトルがまっすぐじゃなくて、微妙に不安定さのあるレイアウトで。ぴしっと整ってるんじゃないアンバランス感が良くて。温かみを感じます。バックの水彩のテクスチャーも気に入っています!
Parade Books ありがとうございます。迷いながらもおじいさまの介護に取り組むマキプ→さんの想いから「ゆらぎ」や「ぬくもり」をイメージしてデザインさせていただきました。パレードブックスはデザインと担当者の人柄でお選びいただきましたが、クラウドファンディングの会社はどのようにお選びになりましたか?
著者 Readyforさんの「社会貢献型」という特徴が書籍の内容に合っているかな、と思って選びました。専属で担当者がついてくださるのも嬉しかったですね。アドバイスいただきながら進めることができました。実は他のクラウドファンディングの会社からは「本の出版はちょっと難しいかも」と言われたんです。場所づくりだったり、いろんな人がかかわってつくるイベントなんかはお金が集まりやすいそうなんですが、出版は基本的に個人的なものだからということでした。でも「過去にやっている人がいるし、できないわけがない!」と思って(笑)。Readyforさんは最初から乗り気で応援してくださいました。
それで、クラウドファンディングのページを作るまでは順調に進んだんですが、苦戦したのは活動をアピールする「広報」です。
Parade Books クラウドファンディングすることをみんなに知ってもらうアクションですね。
著者 そうです。いつどんなことをするべきかというスケジュールを組むんですが、それをこなしていくのに必死でした。「お金をください」じゃなくて、「私の話に共感してほしい」とだけ言えたら気が楽なんですけど……。ただ、応援してくれる人も結構いるので、そういう声援がやる気につながりましたね。
広報を行うなかで、批判的なコメントをもらったことも印象に残っています。自分と違う意見の人もいて当然なんですけどね。救われたのは、落ち込んでいられないほど忙しかったこと。出版の作業と同時進行だったのでくよくよしている暇がなかったんです。
Parade Books 広報を行うなかで批判も出てくるというのは、クラウドファンディングに限らず、出版においては避けることができない点だと思います。
著者 でも、こんな風に市場の反応をあらかじめ試せるのもクラウドファンディングのメリットですね。出版部数を決めるのにも役立つと思います。お金集めだけを目的にすると、労力に比例しないかもしれません。知り合いに声をかけるだけでなく、支援者を集めるためにはイベントが必須なので、お話会を開いたり……。
Parade Books 1度は私も参加させていただきました。
著者 ありがとうございます。大変だったものの、お話させていただいて、一緒にお食事をして、という経験は財産になっています。ご支援いただくのって本当にありがたいことです。一人ひとりの支援に感動が詰まってます。
Parade Books 結果として23名が支援してくださったんですね。かなりの人数だと思います。
著者 実は途中からあきらめてて(笑)。だいたい最初に支援がバーンとあって、しばらく停滞して、最後にまた伸びるというのが一般的らしいんです。でも、それを知っていても停滞していると気がめいるというか……。とはいえ、めげていても広報のスケジュールはどんどん進行するし、Readyforさんからは「告知してください」と後押しされるし、「もうしんどいよ~」って感じたこともありました(笑)。でも、「支援お願いします」というメールを送りまくったら、ほんとに最後伸びてきたんです。
Parade Books 達成したときのお気持ちはいかがでしたか?
著者 幻を見ているようで、画面が間違っているんじゃないかと疑いました(笑)。
私の話だと「大変そう」と感じる方もいるかもしれませんね!でも、終わってすぐ次の企画を考える人もいるんですよ。だから苦労と思わない人もいると思います。あとは1人よりも何人かでチャレンジしたほうがラクみたいです。
Parade Books 単純に広報活動の人脈も2人になれば倍ですものね。私は出版記念パーティに参加させていただいたのですが、参加者のほとんどがクラウドファンディングで知り合った方という印象で驚きました。
著者 そうですね。クラウドファンディングを活用して出版したことで、たくさんの方と知り合えましたし、何より自分自身が変わりましたね。交流を広げようとする人間になれました。人とのつながりからなんでも始まっていくんだと思えるようになったんです。
著者 最初、本が完成したときは、周りの人に「出版したよ」ってアピールしたり、著名な方に献本したりするんですけど、時間がたつとだんだんそういう活動がおろそかになってくるんですよね。でも、ご支援いただいた方々のことを思い出すと、お金をわざわざ出してくださった方の思いを背負っている分、怠けていられない、と気持ちが引き締まるんです。
Parade Books アピールの成果でしょうか。テレビに出演されたり、介護新聞に記事が掲載されたりしましたね。
著者 どちらも出版する前です。クラウドファンディングの広報の一環です。ニュースリリースをお手紙として各メディアに送るうちに話が来ました。
Parade Books 出版後の反響というのは何かありましたか?
著者 出版してからは本をもっていろんな方とつながりたいと思って、介護系のイベントに参加したときに有名な先生とか、素敵な活動をされているドクターとかに名刺代わりに献本していたんですね。そしたら、テレビでよく見かける有名な訪問医の方からお電話をいただけて。渡した翌日に一晩で読んで「あの本良いから」と連絡くださったんです。さらに、その先生もかかわっている協会の理事会にお呼びいただいて、雲の上の存在のような方とたくさん知り合えました。今ではそういう方々が私のイベントに協力してくださるんですよね。ちゃんと時間を使って。ボランティアで応援してもらえることは本当にありがたいです。向こうから企画をいただいたりもするんですよ。「今度うちに話しにこない?」とか「こんなイベントあるよ」とか。
出版したという事実は本当に大きくて、医療業界の方とか、介護業界の方とか、教授クラスの偉い方とかとも直接お話しができるようになれたんです。
Parade Books パレードブックスの著者の方には、出版したことを十分にアピールできていない方がいらっしゃるように思います。「それってすごくもったいないことだな」とマキプ→さんのお話を聞いて思いました。ちなみにイベントではどういうことをされてるんですか?
著者 お話会です。私の経験を伝えられたらいいなと思って。
Parade Books そういう活動をするのにあたって、本が役立っていますか?
著者 自分の意見をしっかりまとめられたというのもあるんですけど、やっぱり「出版された方ですね」って見てもらえることが大きいです。出版の力を感じます。お話会のあと、読んでない方が帰りに買ってくださったり、事前に読んできてもらえたり、一度に話せることには限りがあるので、そういう点でも本が役立っています。介護施設の教育係をされている方が「本をテキストに使っていい?」って言ってくださったことも。何人かに「セミナーで使っていい?」とお声掛けいただきました。私の知らないところで授業に使われてるってありがたいですよね。
Parade Books 出版しないと個人的な体験に終わっていたところが、いろんなところに声が届いているということですね。改めて出版の力を感じることができました。

マキプ→
1976年大阪生まれ。本名・見浪真樹。社会活動家。
2014年春に祖父が入院し、同年他界するまでキーパーソンとしてかかわる。
地域に高齢者・子ども・障害者が気軽に集える場所をつくることを夢見ている。

PageTOP