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第27話
文章を書く前に

ライターという仕事柄、
私はこれまでさまざまな取材を行なってきました。
過去に取材した主な相手としては、
企業経営者、京都の老舗料理店をはじめ、幅広い分野の商店、
神社やお寺などがあげられます。
ほんの数回ですが、俳優さんや女優さんを取材したこともあります。
初対面の方と話すときにはとても緊張しますが、
多様な業界の興味深いお話が聞けることが多く、
取材は、ライターならではの楽しみの一つといえるでしょう。

取材する際、相手に関する予備知識がないと、
うまく質問できませんから、たいていは事前に「予習」をします。
相手の業界についての一般的な知識や、
著名な方の場合は過去の経歴などをざっと調べたうえで、
記事のテーマに沿った質問事項をあらかじめ考えておくのです。
そして、実際の取材にあたっては、用意した質問をしたり、
話の流れに応じてアドリブで質問することもあります。
取材はカセットテープに録音し、
わかりにくいと思われる言葉や事柄は、
確認しながらメモを取っておきます。
また、取材時に、相手から参考資料をお預かりすることもあります。

取材後は、テープを聞き返して内容を書き取ります。
短い文章を書くときは、ポイントをしぼって書き取り、
長い文章や対談記事を書くときは、細かいところまでよく聞いて書き取るのです。
さらに、記事を書くのに必要と思われる資料を収集するわけですが、
近年は、取材相手がウェブサイトを持っておられる場合が多いので、
昔に比べて情報を集めるのがとても便利になりました。

このように、私たちライターは、文章を書き始める前段階において、
取材や資料収集などの作業に、かなりの時間と労力を割いています。
そして、十分な材料を用意したうえで、原稿を書き始めるわけです。

事前準備において、最も大切なのは、
原稿として書く量を、少しでも上回る量の材料を集めることです。
例えば、原稿用紙10枚分の原稿を書かなければならないのに、
5枚分の材料しか集められないと、無理に話をダラダラと引き伸ばしたり、
テーマから離れた余分な内容まで書かざるを得なくなります。
そんなことをしたら、当然良い原稿にはなりません。

理想としては、原稿用紙10枚の原稿を書く際、
その数倍の文字量の材料を用意します。
その中から、書こうとするテーマに深く関わる部分をピックアップして、
ギュッと凝縮した形で書き表すと、
内容が濃くて読み応えのある文章をつくることができます。

材料が豊富にあるとき、心がけなければいけないのは、
「あれもこれも書きたくなる衝動を抑える」ことです。
いくら良い材料があるからといって、どれもこれも詰め込んでしまうと、
ポイントの定まらない散漫な文章になる危険性が高まります。
たくさんの材料の中から、テーマに沿った「美味しい内容」を厳選し、
残りはバッサリと捨ててしまうことが肝要です。

◆ヒント&ポイント◆
「書くための材料は、事前になるべく多めに用意する」
「豊富な材料の中から、本当に良い部分を厳選して文章にまとめる」

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