Category : 本の仕様やデザインの話
ソフトカバー、ハードカバーの違いを教えて!
ご質問ありがとうございます。
自費出版する上で盲点になるのが製本です。ソフトカバー、ハードカバーという名前は聞いたことがあっても、「違いはよく分からない」と仰る方は意外と多いんですよ。
見た目の違いをおさらい。
表紙(カバーをとった一番外側の紙)が柔らかいのがソフトカバー。表紙と本文は同じ大きさです。マンガ、文庫本、実用書、ビジネス書など、さまざまなジャンルで見かけますよね。
ハードカバーは表紙が厚めのボール紙でできているもの。ちょっとやそっとの力では折れ曲がりません。表紙が本文よりひとまわり大きくなっているのも注目です。新刊の文芸書、絵本・写真集などが代表的なジャンル。
と、こうして画像にすると違いはほんのわずかですが、使ってみると違いは歴然。本好きの人ほど好みが分かれるところです。本のつくり手としては「原稿内容」「読者層」「読書シーン」などなど、さまざまな点を考慮しながら、どちらが良いかを選ぶ必要があります。
費用、使いやすさなど項目別に比較。
いろんな面で対決させてみました。あなたの原稿に合うのはどっち?
●費用
価格表を見ていただくと分かる通り、ソフトカバーのほうが安いです。四六判、本文モノクロの「本格タイプ(文芸書)」を例に取ると、その差は300部で約6万円、1,000部で約9万円と結構なもの。原因は、製本工程の違いにあります。
・ソフトカバー・・・表紙と本文をそれぞれ印刷したあと、糊づけして一緒に断裁。
・ハードカバー・・・表紙を印刷したらボール紙に貼り付けて断裁。本文を印刷して断裁。最後に表紙と本文を糊づけする。
※印刷・製本レポート参照
要するに、ハードカバーの方が手間がかかるんですね。もちろんその分だけメリットもあるわけですが、現実問題として数万円の違いは大きいもの。パレードブックスに相談される方も、どちらか迷った場合はソフトカバーを選ぶことが多いです(全体の6~7割)。
●使いやすさ
どんな場面でも使いやすいのは、やっぱりソフトカバーでしょう。
・軽い(持ち運びの負担が少ない)
・やわらかい(狭いスペースにも収納しやすい、片手で読める)
・読みやすい(本文と表紙が同じ大きさなので、ページをめくりやすい)
あたりは見逃せないポイントですね。
ハードカバーも背に空間があるので、開きがいいという特長はありますが、これはどちらかといえば大判の本をじっくり読むときに生きてくるメリット。表紙が大きいので、テンポ良くページをめくるのには向きません。おまけに、ソフトカバーでもPUR製本という方法を使えば分厚くても開きのいい本がつくれるとあっては…さすがに勝負ありでしょう。
※記念誌『三〇周年大百科』制作秘話(1,000ページのソフトカバー!)参照
●耐久性、厚み
いよいよ反撃開始! 使いやすさの面ではマイナスだったハードカバーの堅く厚い表紙は、中身を守る意味で大きなプラス。鞄に入れて持ち運ぶときや、地面に落としてしまったとき。ボール紙の頑丈さは心強いかぎり。力加減の難しい小さなお子さん用の絵本はほとんどがハードカバーですよね(※)。
※単純に、ページ数が少なすぎると製本できないという事情もあります。
また、ハードカバー特有の「厚み」も見逃せません。
たとえば、故人の作品集や遺稿集など、原稿量が少なくそれ以上増やしようがない場合。ソフトカバーだとどうしても重厚感に欠ける仕上がりになりますが、ハードカバーを使えば、最低限の厚みや背文字の大きさを確保することができます。
●雰囲気
最後に、本としての雰囲気を比較。もっとも好みが分かれるところですね。
ソフトカバーは、良い意味での敷居の低さが魅力です。書店に置かれた際も手に取りやすく、その手軽さから営業ツールとしてビジネスに活用されることも多いです。
一方で、高級感を求めるならハードカバーでしょう。スピン(紐のしおり)や花布(背の飾り)のついたいかにも「本らしい」雰囲気は、長く保存する本や、プレゼントにぴったり。表紙には革や布も使うことができるので、さらに上質な雰囲気に仕上げることもできます。
まとめ
〈ソフトカバーのメリット〉
・費用の負担が少ない
・ページを頻繁にめくる本向け
・カジュアルな雰囲気で、ツールとして活用しやすい
〈ハードカバーのメリット〉
・耐久力抜群
・本らしい雰囲気がある
・高級感があり、プレゼントに最適
ということで、いかがでしたでしょうか。なんとなく、それぞれの個性を掴んでいただけたかと思います。
もちろん、本格的な作品集でも、気軽に手にとってほしければソフトカバーにするのも○。軽いタッチの旅行記を、お世話になった人たちに長く読んでほしいからとハードカバーにするのもいいでしょう。本をつくったあとの使い道も含めて、柔軟にイメージを膨らませてみてください。
配信日:2018年10月19日